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カッラーラの大理石 — 山から切り出される白

古代ローマからミケランジェロ、そして現代のデザインへ

雲のかかる、カッラーラの大理石採石場(イタリア・トスカーナ州)
カッラーラの採石場。白く見える山肌は、雪ではなく大理石

イタリア・トスカーナ州の北の端。海に近い町カッラーラの背後には、雪をかぶったように白く光る山並みが続いています。けれども、その白さは雪ではありません。切り出された大理石の岩肌です。カッラーラ(日本では「カララ」「カラーラ」とも表記されます)は、二千年以上にわたって世界に白い石を送り出してきた、大理石の代名詞のような土地です。

山そのものが、石切り場

カッラーラの大理石は、町の背後にそびえるアプアーネ・アルプスの山々から切り出されています。山には少なくとも650か所の採石場の跡があり、その約半分は、すでに掘り尽くされたり、使われなくなったりしているといわれます。ひとつの地域から切り出された大理石の量としては、世界でも類を見ない規模です。

遠くから眺めると、緑の斜面のところどころが白く削り取られ、段々畑のような階段状の切り口が見えます。山が少しずつ形を変えながら、何世紀ものあいだ石を送り出してきたことがわかります。

アプアーネ・アルプスの山並みと、カッラーラ近郊の大理石採石場
アプアーネ・アルプスの山並み。中央の白い部分が採石場

古代ローマから、ミケランジェロへ

この石は、古代ローマの時代から使われてきました。当時は、近くにあった港町ルーニの名から「マルモル・ルネンセ(ルーニの大理石)」と呼ばれ、ローマのトラヤヌス帝の記念柱などの建造に用いられたとされています。

中世には、採石場の多くを領主が所有し、地元の石工の家族がそれを借りて、切り出しから運搬までを担いました。1564年には、この地を治めたチーボ=マラスピーナ家が「大理石局」を設け、採掘の産業を管理するようになります。

ルネサンスの時代になると、カッラーラの大理石は彫刻家たちにとって特別な素材になりました。ミケランジェロが1501年から1504年にかけて彫り上げた《ダヴィデ》も、この山の大理石から生まれたとされています。台座を含めた高さは517センチ。完成した像は、フィレンツェの人々の力と独立の象徴として、ヴェッキオ宮殿の前に置かれました。

ひとくちに「白」と言っても

カッラーラの大理石は、白から青みがかった灰色まで、驚くほど色の幅があります。色や模様の違いは、石灰岩が熱や圧力によって大理石に変わる過程で、ほかの鉱物が混じり合うことから生まれます。

なかでも、混じり気のない純白の「スタトゥアリオ」は、細かな彫りを受け止め、深い艶が出ることから、記念碑的な彫刻に使われてきました。現在では非常に希少になったともいわれます。流通量が多いのは「ビアンコ・カッラーラ」や「ヴェナティーノ」などで、金色を帯びた筋が入る「カラカッタ」、大胆な模様の「アラベスカート」は、より高価な種類として知られています。灰色の濃い「バルディリオ」は、古代ローマの時代から床や壁の仕上げに用いられてきました。

山の内部へ掘り進められた、カッラーラの大理石採石場の坑道
切り出しを待つ、カッラーラの大理石の岩肌
山の内部へ掘り進められた坑道(左)と、切り出しを待つ岩肌(右)

切り出しの現場

採石は、昔から危険と隣り合わせの仕事でした。急な斜面から巨大な石塊を切り離し、麓まで下ろす作業には、高い技術と経験が求められます。現在では機械化が進み、山の外側を削るだけでなく、山の内部へ坑道のように掘り進める採石場もあります。

カッラーラの採石場で切り出された大理石のブロックと重機
採石場で切り出された大理石のブロック

山から石を下ろす

切り出した石を、どうやって山から下ろすのか。カッラーラでは長いあいだ、「リッザトゥーラ」と呼ばれる方法がとられてきました。石の塊を木の橇に載せ、油を塗った木の枕木の上を滑らせる。ロープを斜面の杭に巻きつけ、何人もの男たちが少しずつ緩めながら、急な斜面を下ろしていくのです。ロープが切れれば命に関わる、危険な仕事でした。

この方法は、第二次世界大戦後に採石場まで道路が通じ、トラックで石を運べるようになると姿を消しました。いまは毎年夏に、その技を伝える再現の催しが開かれています。白い石の背後には、山とともに生きてきた人々の、長い労働の歴史があります。

石目を読む、現代の作り手

大理石は天然の石です。同じ種類でも、模様の出方や色の濃淡は一つひとつ異なります。現代の家具やオブジェの作り手にとって、それは制約であると同時に、最大の表現の手がかりです。一枚の石を二つに割り、模様を左右対称に開いて並べるか。筋が天板の端から端まで流れるように切るか。石の塊をそのまま削り出して、模様を立体の表面に回り込ませるか。

磨き上げた鏡面にすれば石目は深く光り、艶を抑えれば石はやわらかな質感になります。主成分が炭酸カルシウムのため、酸に触れると艶が変わる繊細さも、この石の性質のひとつです。

同じ種類の石でも、どの面をどう切り出し、石目をどこに見せるかで、作品の印象は大きく変わります。RIVONTEが大理石の作品を選ぶときに見ているのも、石の名前や産地だけではありません。素材を読み、生かし方を決める作り手の判断にこそ、その作品ならではの価値があると考えています。天然石が一つひとつ異なる理由は、一点物と限定生産の記事でも触れています。

Photo credits & licenses
  1. Wittylama, “Carrara marble quarry” (Wikimedia Commons), CC BY-SA 4.0 — 縮小して掲載
  2. Ingo Mehling, “Marble Quarry near Carrera” (Wikimedia Commons), CC BY-SA 4.0 — 縮小して掲載
  3. Vmenkov, “Inside a Carrara marble quarry 6395” (Wikimedia Commons), CC BY-SA 3.0 — 縮小して掲載
  4. Wittylama, “Carrara marble quarry face” (Wikimedia Commons), CC BY-SA 4.0 — 縮小して掲載
  5. Vmenkov, “Blocks of marble in Carrara marble quarry 6386” (Wikimedia Commons), CC BY-SA 3.0 — 縮小して掲載

写真は各ライセンスの条件に従い、長辺を縮小して掲載しています(切り抜き・色調整なし)。表示のない写真は、パブリックドメインまたは CC0 です。

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