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Italian Luxury Furniture公開日

イタリア高級家具とは — 素材と造形、職人技から考える価値

一脚の椅子から読む、デザイナーと工房と土地の関係

工房で木の板に手を添える職人
工房で木の板に手を添える職人。家具の質は、こうした手の判断の積み重ねから生まれる

重さ1.7キログラム。指一本で持ち上がるほど軽い椅子が、1957年にミラノで発表されました。ジオ・ポンティがデザインし、家具メーカーのカッシーナが製作した「スーパーレッジェーラ(超軽量)」です。この一脚には、建築家の構想と、リグーリアの海辺の町に伝わる椅子職人の技、そしてミラノ北部の家具産地の工房文化が、ひとつに重なっています。「イタリアの高級家具」の価値を考えるとき、手がかりになるのは、ブランドの名前よりも、こうした重なりのほうかもしれません。

一脚の椅子に重なるもの

スーパーレッジェーラのもとになったのは、リグーリア州の町キアヴァリで古くからつくられてきた軽い木の椅子でした。ポンティは、その伝統の形から余分な重さと素材を削ぎ落とし、構造そのものを形にしていきます。脚の断面は三角形に近く、細く、それでいて十分な強さを保つ。図面だけでは決まらない寸法を、職人の手と試作の繰り返しが支えました。

製作したカッシーナは、1927年にチェーザレとウンベルト・カッシーナの兄弟が、ミラノの北、ブリアンツァ地方の町メーダで始めた工房です。建築家が形を構想し、木工の技術を持つ工房がそれを製品にする。この協働のかたちこそ、20世紀のイタリアの家具が世界で特別な存在になった理由のひとつでした。

家具の町が連なる土地

ブリアンツァには、家具の町が点在しています。メーダはデザイン産業と家具の手仕事で知られ、リッソーネは「家具の都」とも呼ばれて、家具と室内装飾を専門とする図書館を備えています。カントゥもまた、家具づくりの町として名前が挙がる土地です。

北東部のフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州には、「椅子の三角地帯」と呼ばれた地域があります。マンツァーノ、コルノ・ディ・ロザッツォ、サン・ジョヴァンニ・アル・ナティゾーネの三つの町を中心とする椅子の産地は「椅子の地区(ディストレット・デッラ・セディア)」と呼ばれ、地元の自治体の規約にも、その木工と椅子の産業を支える方針が記されています。

ひとつの地域の中に、木を挽く人、張り地を仕立てる人、金属や石を加工する人がいる。デザイナーが試作を頼めば、数日のうちに近くの工房から答えが返ってくる。専門の技が近くに集まっていることが、図面と手のあいだの細やかなやりとりを可能にしてきました。

家具に託されたもの

イタリアで家具が特別な意味を持ってきた歴史は、さらに古くまでさかのぼります。中世末からルネサンスにかけて、裕福な商人や貴族の家では、婚礼の際に「カッソーネ」と呼ばれる長持ちが贈られました。花嫁の持ち物を納めるこの箱は、当時最も重要な家具とされ、15世紀のフィレンツェでは名高い画家たちもその装飾を手がけました。

トスカーナでつくられた婚礼用の長持ち(カッソーネ、1425〜50年頃)
トスカーナでつくられた婚礼用の長持ち、カッソーネ(1425〜50年頃、メトロポリタン美術館)

家具は、使う道具であると同時に、家の誇りや祝福を託す器でもあった。画家や彫刻家、建築家が家具に関わることを当たり前とする感覚は、スーパーレッジェーラを生んだ協働の文化とも、遠くでつながっているように思えます。

素材への感性

イタリアの家具づくりを支えてきたもうひとつのものは、素材の近さです。トスカーナの山からはカッラーラの大理石が、ローマ近郊からはトラバーチンが切り出され、ヴェネツィアのムラーノでは七百年以上、ガラスの炉の火が守られてきました。石の模様をどの面に見せるか、ガラスの色をどう重ねるか。素材の産地と、その扱いを知り尽くした職人が近くにいることが、イタリアの家具の表現の幅を広げてきました。

家具に使われる木材の見本図版(1937年)
切り出しを待つ、カッラーラの大理石の岩肌
家具に使われてきた木材の見本図版(1937年、左)と、切り出しを待つカッラーラの大理石(右)

見えない部分の仕事

上質な家具の仕事は、目に見えない部分にも表れます。木と木を組む継手、引き出しの滑らかな動き、裏側や内側の仕上げ。張りぐるみの椅子であれば内部の構造と詰め物、金属のフレームであれば溶接の跡の処理。完成した姿からは見えにくい工程に、どこまで手をかけるかを決めるのは、作り手の経験と美意識です。

RIVONTEが考える価値

「高級」という言葉は、価格の高さを指すことが少なくありません。けれどもRIVONTEが考える価値は、その家具がどのような考えのもとに、どのような素材と技でつくられたのかという、つくられ方そのものにあります。よく知られた名作の背後にも、まだ日本に紹介されていない小さな工房の作品にも、同じ価値を見いだすことができます。

私たちはイタリアの作り手を訪ね、素材や工程を確かめたうえで、作品が生まれた背景とともに日本へお届けしたいと考えています。素材の実験については素材の常識を超えてで紹介しています。

Photo credits & licenses
  1. Wittylama, “Carrara marble quarry face” (Wikimedia Commons), CC BY-SA 4.0 — 縮小して掲載

写真は各ライセンスの条件に従い、長辺を縮小して掲載しています(切り抜き・色調整なし)。表示のない写真は、パブリックドメインまたは CC0 です。

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